こんにちは、まちゃです。
近年、台湾は文化部(日本の文科省に相当?)主導でクリエイターの養成に力を入れています。
台湾でも漫画やアニメ、ゲームや映画は娯楽として定着していますが、漫画やアニメは日本産かマーベルやDCと言ったアメリカ産ばかりでゲームも似た感じ。
映画も日本や韓国、ハリウッドの映画ばかりです。
九把刀みたいに小説も書けて映画監督も出来ちゃう多才なクリエイターもいますが、非常に数が少ないです。
そこで政府が奨励しているのが、台湾産のコンテンツの育成とクリエイターの養成です。
その一つとして、今年台北にオープンしたのが「漫畫基地(漫画基地)」。
台湾の漫画文化の啓蒙と漫画家の育成を目的とした施設です。
今回は、この「漫画基地」に実際に行ってみた様子をレポートします。
台北にオープンした「漫画基地」とは?
漫画基地は台北駅の北側、徒歩10分程の華陰街に有ります。
デパートQスクエアのすぐ近くですね。
2階と3階は展示スペースになっていて色々なイベントが開催されています。
面白いのが4階で、何と漫画家向けのコワーキングスペースになっています。
1~3階は誰でも入れますが、4階は事前申請をした漫画作成作業をする人だけが入れます。
4階から続いている屋上は交流用のサロンになっています。
同じ漫画家を目指す人たちと交流が持てるのは、良い刺激になりそうですね。
また、漫画基地は作品発表機会の提供や個人漫画家向けの法律相談等も行っているそうです。
利用希望者は個人の略歴とポートフォリオ、創作計画などを提出して利用申請をします。
それらが独創性、具体性、作品の公共性、経費の合理性などを鑑みて審査され無事に通過すれば4階の利用許可と最高120万元!の奨励金を受け取れます。
普通に国が提供しているフリーランス向けのサービスとして破格ですね…。
本気で作品を作るクリエイターを応援しようという気概も感じられます。
台湾の漫画事情
台湾の漫画の歴史を簡単に見てみましょう。
実は、台湾は漫画自体は結構歴史があります。
1940年代には既に児童向け雑誌の中で漫画は存在していて、1960年代には映画などでも一つのジャンルになっている「武侠」物の漫画が人気を博しました。
しかし、戒厳令下の1966年に「編印連環圖畫輔導辦法」という法律が制定されたことで台湾の漫画創作は衰退してしまいます。
この「編印連環圖畫輔導辦法」により漫画は国の審査を受けることになり、社会に悪影響を与えかねない物は全て発行が禁止されました。
倫理感や道徳に反する物、子供達に害になる物、暴力的な内容や迷信を広めると判断された物は全てNGという厳しい内容です。
戒厳令下の台湾では表現の規制が非常に厳しく、有名な所では作家の柏楊はアメリカの漫画ポパイの翻訳で、たった一言の翻訳内容を理由に投獄され検察側から死刑を求刑されます(判決は懲役12年)。
台湾では20年以上、漫画家が自由に漫画を描けない時代があったんですね。
これでは、台湾で独自の漫画文化が育たなかった理由も納得です。
出版できないなら、描く人いないし描く技術を教える人も減っちゃいますよね。
この頃、台湾の漫画家が作品を発表できなくなった影響からか、日本の漫画の海賊版が出回るようになったそうです。
1990年代からは、台湾でも各種漫画雑誌が発行されるようになり漫画産業は再び活性化します。
それでもやはりクオリティの高い日本の漫画の人気は強く、台湾独自のクリエイターは中々育たずにいました。
そこで台湾の文化部が始めた施策の一つが「金漫獎」です。
「金漫獎(GOLDEN COMIC AWARD)」は毎年優秀な漫画作品を選ぶ賞で、児童漫画、少年漫画、少女漫画、青年漫画、新人賞、年間最優秀賞等の各ジャンルで表彰をしています。
特別貢献賞として、台湾の漫画文化の発展に貢献した人にも賞を与えています。
ただ、年間最優秀賞を前年の年間最優秀賞獲得作品の続巻が受賞してたりしているので、まだまだ作品の絶対数が少ないのかなぁといった印象です。
金漫獎を獲得した台湾の漫画
「金漫獎」を獲得した漫画をいくつかご紹介。
有何不可 3
2018年 少女漫画賞
魔幻時刻一THE ACTOR 第一集
2018年 青年漫画賞ノミネート
用九柑仔店1:守護暖心的所在
2017年 青年漫画賞
大仙術士 李白(3)
2016年 少年漫画賞
画像は全て金漫獎公式サイトから
この絵柄なら、普通に日本でも受け入れられそうな感じですね。
今度、実際に読んでみようかな。
もしも台湾で本を買うなら、こちらの記事の書店なら蔵書も多くて間違いないと思います。
漫画基地の内部をご紹介
外観
服飾品等の安売り店が並ぶ華陰街の一角に突然現れる漫画基地。
1階
台湾の漫画家の作品が販売されていて、カフェコーナーも有ります。
2階、3階
2階、3階はイベントの展示コーナー。
これは各年代に描かれた漫画作品…ではなく、それぞれの時代を舞台にした漫画作品の紹介。
漫画を通して、それぞれの時代を知る事ができますよ的な意図でしょうか。
漫画を舞台別に分類したコーナーも。
ここでは都会生活を描いた漫画が紹介されています。
台湾でも「BL」とか「百合」はジャンルとして確立しています。
これは台湾全国の高校の制服を描いたイラスト集「制服至上-臺灣女高中生制服選」という一部のマニアの方が大喜びしそうな作品を書いた「蚩尤」のイラスト。
この作家の別の作品を手掛けた編集者が上記の金漫獎の編集賞を獲得しているのですが、そちらの作品「最強天后」ではなく、女子高生の制服を書いたイラスト集の方が日本語版も作成されて普通にAmazonや楽天で買えます。
こっちの方がニーズが有るんですね…。
初めに漫画基地の話を聞いた時は、国主導の箱物でクリエイターが育つのか?と思ったのですが、どうなんでしょうか。
コワーキングスペース的にしたのは面白いなぁ。
いつか、漫画基地出身作家のヒット作が出るのが楽しみですね。
ちなみに利用資格の一つに中華民国国民であること、という一文があるので日本人は利用できません…残念!
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