先日、Twitterをフォローさせていただいている台湾在住ブロガーの07-17(@0717_ying)さんとこんなやり取りがありました。
ネジゆるゆる過ぎて「次やれば取れるかも」感が全くない台多いですよね😂
— まちゃ@台湾子育てパパ (@1007hiro) 2018年12月8日
台湾では、ここ数年でやたらUFOキャッチャー屋を見かけるようになりました。
台湾に初めて来た日本人の多くが、街中のいたるところにセブンイレブンやファミリーマートといった日本と同じコンビニが大量にあることに驚きます。
実は台湾は、韓国に次いで世界第二位のコンビニ密度を誇ります。
しかし、今そのセブンイレブンとファミリーマートの店舗数を合計した数よりも増えているのが、UFOキャッチャーのお店「夾娃娃店」です。
今回の記事では、台湾メディアの報道や政府財政部の統計情報などをもとに、台湾でUFOキャッチャー店が謎の増加を見せている秘密に迫ります!
台湾で爆発的に増えたUFOキャッチャー店
「自動販賣商業同業公會」の統計によると2018年現在、台湾全国で夾娃娃機(UFOキャッチャー)の台は45万台以上設置されているそうです。
UFOキャッチャー業を営む会社は3,353社で店舗数は1万店を超え、これは台湾全国のセブンイレブンとファミリーマートの店舗数を足したよりも多い数です。
UFOキャッチャー産業に従事する人数は台湾全国で約10万人!!
そこそこ栄えている都市並の人数です。
なぜ台湾でUFOキャッチャー店が爆発的に増加しているのでしょうか?
台湾のUFOキャッチャーブームの経緯
台湾のUFOキャッチャー店は、これまでにも何度かのブームの過程が有り今に至っています。
2000年前後
以前から日本式の二本爪のUFOキャッチャーは有りましたが、この頃に初めて台湾で三本爪のアームのUFOキャッチャーが登場し、新鮮さから一気にブームになり台湾全国で10万台ほどが稼働しました。
しかし、このブームは「電子遊戲場管理條例」という規則が整備され台の設置に制限ができたことにより一旦頭打ちとなりました。
2000〜2010年
その後、台湾で新たに景品の獲得保証システムが登場します。
これは景品が取れなくも累積の遊戯金額が一定額に達すると、景品が確実に貰えるシステムです。
このシステムの特徴は1人が繰り返し遊ばなくても、自分が遊ぶ前に別の人が何回か遊んでいれば偶然自分の番が獲得保証の回かもしれないというユニークさです。
このシステムの導入により、どんなにお金を払っても景品が取れない事もあるというUFOキャッチャーの欠点が補われました。払った金額が景品に見合っているかは置いといて…。
こちらが獲得保障システムの実機画像。
既に160元遊ばれているので、後1,520元で景品が貰えます!やらなきゃ!!
ちなみに1,520元あれば、台湾の5つ星ホテルでアフタヌーンティのコースが楽しめるんですけどね。
更にブームを加熱させたのが、一部の業者が始めた特殊なUFOキャッチャーです。
それは、台の中に景品ではなく番号が書かれた紙の入ったカプセルを入れ、カプセルを取ると同じ番号の景品と交換できるという形態のお店です。
これにより、UFOキャッチャーの景品は小さなぬいぐるみや小物から大型の家電や高級ブランド品に様変わりしていきました。
ゲームセンターの遊戯台の一つだったUFOキャッチャーが高額景品を取り扱い、消費者の射幸心を煽るビジネスと化した結果、何とUFOキャッチャーは賭博行為にあたると見なされ当局からの取り締まり強化を呼び込んでしまいます。
これにより、2009年頃に業界は一度衰退します。
※現在は前述の「電子遊戲場管理條例」第14条(獎品之兌換及禁止行為)の定めにより景品は2,000元が上限となっています。
2013年以降
賭博行為にあたるとされ規制が強化されたことと長年続く土地代の高騰もあり、台湾でUFOキャッチャーは既に斜陽産業と言われていました。
その流れに変化が起きたのが、オンライン監視の無人店舗の出現とUFOキャッチャー台のレンタルによる個人の副業としての投資先としての注目です。
オンラインの監視システムが発達したことにより、オーナーは複数店舗を手軽に運営できるようになりました。
また、台湾政府が2016年に決めた「一例一休(ざっくり言えば完全週休二日制度)」の開始以降、多くのサラリーマンは収入が減り年収の減少を招いていました。
そこに目を付けたのが複数店舗を展開できるようになったオーナー「場主」達です。
彼らはUFOキャッチャー台を1台4,000~5,000元程度/月でレンタルして自身の店舗に設置させる「台主」制度を始めました。
この制度が副業を探していたサラリーマンに大ヒットし、投資先として広まります。
共同出資で台をレンタルする学生達まであらわれ、台湾中にUFOキャッチャーの店舗と台が増加しました。
台主となった人は、自由に台の爪の強度や中身の景品を決められます。
絶対に取れない強度にして景品を渡さないか、微妙に取れるか取れないかくらいの強さにして繰り返し遊んでもらうか、全ては台主の経営戦略次第です。
財政部の統計によると、2013年時点での台湾のUFOキャッチャー店は全国でたったの169件でした。
それが2018年現在では1万件を超えているのですから、凄まじい勢いで店舗が増えているのがわかります。
UFOキャッチャー事業の収支は?
台湾の街中を歩くと、本当にあちこちでUFOキャッチャーの店舗を見かけます。
こんなに店があふれていて、本当に「台主」達は儲かっているのでしょうか?
まずは「台主」となった人たちの本業の収入を見てみましょう。
比較的収入の低い層の副業としての人気の高さが伺えます。
台湾の報道によると、軍人や教師、公務員といった公職に就いている人達までUFOキャッチャー副業をやっているそうです。
次に、UFOキャッチャー事業を開始した際の投資費用を見てみましょう。
10万元以上の初期投資をした層が多いのは、台主だけではなく場主も含まれているからです。
5万元以下、月収より少し多い程度の投資で始められるのが「台主」の魅力と言えそうですね。
では、気になる収益はどうなのでしょうか?
儲かるなら、私もやってみたい…。
台主は9割が損をしているという報道も見かけましたが、結構儲かっている人もいる!?
台主は台のオーナーになるので、爪の強さや景品などを自由に決められますが、何かあれば対応をする責任もあります。
台湾のUFOキャッチャーを見ると、この様に各台に張り紙が貼ってあります。
黒塗の箇所には、実際は個人の名前と携帯番号が書かれています。
何かあったら、店舗の責任者ではなく台主に連絡を入れるシステムですね。
景品の補充や問い合わせ対応など、結構管理に手間がかかりそうです。
この張り紙だと対応可能時間に「白天(日中のみ)」と書かれていますが、昼に本業がある人だと例え昼間だけでも電話で呼び出されるのはしんどいですね。
UFOキャッチャー副業の未来は……
さて、そんな一気に時代の花形副業に躍り出たUFOキャッチャービジネス。
当の台湾人たちは、どの様に感じているのでしょうか。
UFOキャッチャービジネスは泡沫(バブル)だと思いますか?
という質問に対する場主、台主の回答がこちらです。
バブルだと認識した上で流行に乗って一稼ぎ、といった感じなんですね。
流石に商魂たくましい中華圏のみなさま。
ちなみに、上記は場主あるいは台主からの回答です。
一般人に同じ質問をした際の回答はこちらです。
この認識の差(笑)
YESと答えた人の4割が半年から1年以内にバブルは弾けると回答しました。
流行に乗って稼ごうとする人と世間の温度差は、どの国どの分野でもありますね。
また、台主あるいは場主になった人の内、7割が男性で6割近くが30歳以下の若い年代でした。
夢追い人の若い男性が積極的に参戦している、という感じでしょうか。
オンライン監視に加えて電子マネーによる支払い対応機も導入され、店舗に出向いての現金回収の必要もなくなり、運営がどんどん楽になる台湾のUFOキャッチャー業。
日中時間が有り、電話で中国語のクレーム対応ができるなら挑戦してみては如何でしょうか!?
私は…地道に働くことにします(笑)
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